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ここ数日の、経過を記録しておきたいと思います。
本当に自分のためのものなので、ご了承下さい。
20日。
帰宅後、母親より『父親が、調子悪いので検査入院させた』と言われる。
肺ガンの手術をし、術後の経過もさほど悪くなかったが、投薬の影響などで何かちょっとしたことでも引き金になりかねないのでということでの検査入院だった。
母の話だと、帰る頃は普通だったという。
21日早朝。
母親に起こされる。『父親の容態が急変した、今すぐ病院へ向かう』。
ひとまず着替えて、とるものもとりあえずタクシーへ飛び乗り病院へ。
いつもの母からは想像できない慌てぶり、駆け出すのを「落ち着け」となだめつつ外来病棟へ。
ナースセンターへ行くと、併設されてる処置室に父。
呼吸用のポンプを押してる当直医と、必死にマッサージをするナース。
この時点で既に心拍停止、呼吸停止状態。
まるで人形のように、ぴくりとも動かない父親。
よく、ドラマで見かける光景が、自分の身に起こっている。
そのぐらい、現実味が無かった。
たぶん、この時点で、心は逃避していたんだと思う。
当直医の説明では、朝にナースが発見した時には、この状態だったという。
検査入院だったので、一般の病棟、検査機械なども取り付けていたわけではない。
夜半に何らかの要因で、心肺が停止したものと思われる。
延命蘇生処置が行われてはいるが、絶望的な状況。
ひとつひとつ、処置をしながら説明してくれたが、その時はもう理解したくないという意識が前に出て、ただただ呆然としているだけだった。
『できうる限りの時間で処置を続けるので待っていて欲しい』ということで、待合室へ。
もう、この時点で頭は真っ白。
父親が死ぬかもしれないという思考すら無かった。
言葉少なに母親に『大丈夫か?』と声をかけるぐらいしかできない。
ただ、ウロウロと部屋の中を歩き回ったり、部屋の隅に座り込んだり、遠くから除細動の起動音が聞こえる度に目をつぶった。
2〜3時間後、連絡を受け到着した父親の担当医が状況を説明してくれる。
『処置を行ったが、残念ながら心拍・呼吸ともに、戻らなかった』と。
手術前から色々とお世話になっていた担当医は『昨日はあんなに元気だったのに、なんで……』とても口惜しそうだった。
病室のひとつへ案内され、そこには父親が眠っていた。
本当に、眠っているようにしか見えなかった。
現時点で、直接の死亡原因は不明。血中、尿などにも異常はみられなかった。
『あとは、解剖して確かめる手段もありますが?』という担当医に、自分も母親も答えは決まっていた。
『これ以上、身体を切ったりして辛い思いをさせたくない』
処置を行ったり、死亡確認書類などを用意するため、母親は病院へ残り父親と共に帰ってくるとのことで、先に家の準備をするため、帰宅。
病院から家までの徒歩で2km程度を歩いて帰る。
正直、家に帰り着きたくなかった。
このまま逃げ出したいと思った。
道すがら考えるのは『何故、父親が死なないといけないんだ』という自問自答。
肺ガンの手術でじゅうぶん苦しんで、好きなモノも食べられない、外出だって自由にできない。
そんな父親が、なんで余生をゆったり過ごす間もなく死ななくてはならないんだと。
何度も何度も『死ぬなら他に相応しい奴がいるだろう!』と当てのない怒りを抱いたりした。
ふらふらと、帰宅し。姉と共に父の使ってた部屋を片付け帰ってくるのを待つ。
その間に、連絡がついた親戚が駆けつけて手伝ってくれた。
この辺りの記憶はかなり曖昧。
ただ、ボーッと言われたものを運んだりしていたと思う。
しばらくして母と父が帰ってきた。
寝かされた父親は、病室で処置していた時と変わらず、穏やかな寝顔だった。
本当に、寝ているようにしか見えない、綺麗な顔だった。
父親は、病を患ってから母親に『万が一の時には通夜・葬儀はしないで密葬してくれ』と頼んでいたという。
『遺言に従うでいいよね?』という母親に、自分もそれが父親の望みならと同意した。
母親が、少し買い物へ行ってくるというので、その間父親と二人きりになった。
そこで、父親に謝罪した。
何もしてやれなくてすまない。不甲斐ない情けない息子ですまない。何一つ自慢できるようなことのない息子ですまない。
これから、直ぐに変わることはできないだろうからすまない。
そして、これまで、本当にありがとうございました。と。
涙が溢れた。
病院でも現実逃避して、受け入れられなかった父親の死を、この瞬間実感してしまったから。
もう、後悔しても遅いのだと。
全てが手遅れなのだと。
でも、一度受け入れてしまったことで、色々と気持ちの整理がついた。
なんとか、悲しい顔で送り出さずに済みそう。
本当に、本当に父親に感謝しつつ、おくりだしてやろうと思います。
長々と垂れ流してしまいましたが、ここまで見てしまった人、大変申し訳ない。
これからは通常運営に戻ります。